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GUIDE 12 / MEETING ROOM AUDIO

「音声ハウってます」から始まる会議。オンライン参加者が疲れる理由

会議室では音声を使うPCは1台だけ。オンタイムで始めるために、機材より先に参加方法を揃えます。

会議の開始は10時です。10時になってURLを開くと、会議室側から「少々お待ちください。いまスピーカーをつないでいます」。

しばらくして音が出たと思ったら、今度は自分の声が何重にも返ってきます。

「音声ハウってます」
「誰か音声切ってください」
「いま、どのPCから音が出ていますか」

画面に映っているのはPCの前に座った1人だけなのに、声は何人分も聞こえる。誰が話しているのか分からないまま、ようやく本題が始まります。

正直、この時点でかなり萎えます。

会議室側にとっては数分の接続トラブルです。オンライン側にとっては、自分には直せない設定作業を見ながら待ち、ハウリングを聞かされたところから始まる会議です。音がつながった頃には、集中力が少し削られています。

これは立派に設計された「ハイブリッド会議」というより、たまたま出社していた人たちが会議室へ集まり、代表者のPCから参加しているだけのWeb会議です。だからこそ、準備する人もルールも曖昧なまま始まりがちです。

開始時刻になってから、会議室をつくり始める

会議と会議の間に余白がなく、開始時刻になったらURLを開く。少なくとも最近のWeb会議では、こちらの方が普通になりました。

オンライン参加者は時間どおりに入っています。それなのに、会議室側のマイク選びやケーブル接続を全員で待つことになります。

15分の会議で接続に3分かかれば、それだけで冒頭の2割です。参加者が6人なら、設定に消えたのは3分ではなく、延べ18分です。

だからといって、全員に「5分前に入りましょう」と求めたいわけではありません。必要なのは早出ではなく、会議室から入ると決めた側が、開始時刻に話せる状態をつくっておくことです。

誰のPCを使うのか。どのマイクとスピーカーにつなぐのか。接続を担当するのは誰か。毎回その場で相談しているなら、次も同じ数分を失います。

会議室では、音声を使うPCは1台だけ

よくあるのが、代表者のPCを会議室のマイクスピーカーにつなぎ、ほかの人も各自のPCで同じ会議へ入る形です。

資料を自分の画面で見たい。チャットを使いたい。オンライン参加者の顔を近くで見たい。それは構いません。ただし、音声まで全員分つないではいけません。

同じ会議室で複数のPCから相手の声が流れると、その音を代表PCのマイクが拾い、オンライン側へ返します。別のPCのマイクまで生きていれば、端末の間で音が回り、ハウリングが始まります。

ここは「全員ミュート」で終わらせない方が安全です。マイクをミュートしても、PCのスピーカーから相手の声が出ていれば、代表PCのマイクがその音を拾います。

Zoomの公式案内も、同じ会議室に複数の端末がある場合は、ミュートだけではスピーカーが残るため、ほかの端末をコンピューター音声から切断するよう案内しています。Microsoft Teamsも、同じ部屋でマイクとスピーカーを有効にする端末は1台にするよう案内しています。Google Meetには、個人PCの音声を使わずに参加できるコンパニオンモードがあります。

会議室で音を出すPCは1台。ほかのPCは画面だけ参加する。

ハウリングが止まっても、画面には1人、声は数人

音が落ち着けば一件落着、とはいきません。代表者のアカウントから会議室全体が参加すると、オンライン側に表示される名前は1人分です。しかし、聞こえてくる声は数人分あります。

いつもの社内メンバーなら、声だけでも見当がつきます。初対面の商談や、普段接点のない部署との会議では分かりません。

画面の奥に小さく映っている誰かが話す。マイクから遠いため、声もぼやけている。ところが画面に出ているのは、PCを操作している別の人の名前です。

オンライン側は、話の内容を追いながら「いま誰が話しているのか」も推測することになります。自己紹介を一度聞いただけで、全員の顔と声を覚えられるとは限りません。

初対面なら、発言の最初に「営業の佐藤です」「法務の田中です」と添える。それだけでも違います。各自のPCから音声なしで入り、表示名やチャット、挙手機能を使う方法もあります。必要なら各自のカメラを使い、音声だけは代表端末に残します。

誰が話したか分からない状態は、単に聞きづらいだけではありません。誰の意見だったのか、誰が判断したのか、議事録に残す段階でも曖昧になります。

共有マイクでも、席によって聞こえ方は違う

会議室用のマイクスピーカーがあれば、全員の声を同じように拾えるわけではありません。

マイクの近くにいる人は大きく、はっきり聞こえます。テーブルの端にいる人は声が遠く、部屋の響きまで混ざります。小声で話す人の言葉は、一部が消えることもあります。

一方で、マイクの近くで紙をめくる音、キーボードを打つ音、机に物を置く音はよく入ります。会議室では気にならないのに、オンライン側には人の声より近く聞こえる。これもよくあります。

入力音量を上げると、遠い声だけでなく、反響や物音まで一緒に大きくなります。先に見たいのは、マイクの位置と、最も遠い席からの聞こえ方です。

一度テストするなら、マイクの前にいる人だけで済ませないでください。実際に人が座る最も遠い席から同じ一文を読み、近い席の録音と比べる方が実態に近づきます。

会議室の内輪は、オンライン側まで届いていない

会議室にいる人同士は、声以外の情報も使っています。目線で発言の順番を譲る。隣の人に小声で補足する。誰かの表情を見て説明を足す。会議前の雑談を踏まえて笑う。

オンライン側には、その前提がありません。

小声の部分は聞こえず、笑い声だけが届く。カメラの外にいる人の表情は見えない。誰に向けた質問か分からない。こちらが話し始めようとすると、会議室では目配せを終えた別の人が先に話します。

会議室では場を和ませているだけでも、オンライン側から見ると、内輪だけで盛り上がっているように見えることがあります。悪意の問題ではありません。文脈の途中が、音声にも映像にも乗っていないのです。

これが続くと、オンライン参加者は発言の隙を探すのをやめます。会議にはつながっているのに、参加者というより中継を見ている人に近くなります。

オンライン側が空気を読めないのではありません。その空気が届いていません。

オンライン参加者が黙るのには理由がある

会議室側からは、オンライン参加者の反応が薄く、発言も少ないように見えるかもしれません。

ただ、その人は話す気がないのではなく、誰が話し終えたのか分からず待っているだけかもしれません。小声の会話が続いているのか、次の議題へ進んだのかも判断しにくい。わずかな遅延もあるので、発言しようとすると会議室側の誰かと重なります。

進行役が「オンライン参加の○○さんはどうですか」と名前を呼ぶ。会議室内で出た小声の補足も、議論に必要なら言い直す。ホワイトボードではなく、全員に同じ資料を画面共有する。この程度でも、かなり入りやすくなります。

「何かありますか」と全体に聞くだけでは、会議室の空気を共有できない人ほど手を挙げにくいままです。

高い機材より先に、4つだけ決める

専用の会議室システムや高性能なマイクで改善できることはあります。ただ、複数のPCから音を出している状態では、機材を替えても同じことが起きます。

  1. 会議室側の接続担当を1人決める

    開始時刻になってから、全員で設定方法を相談しないようにします。

  2. 音声入出力を使う端末を1台に絞る

    ほかのPCは音声に接続せず、必要な画面機能だけを使います。

  3. 初対面では、発言の最初に名前を添える

    表示名と話者が違う状態でも、オンライン側が迷いません。

  4. 最も遠い席の声を一度録音する

    会議室の中ではなく、オンライン側へ届く音で確認します。

会議室ごとに機器が違うなら、使う端末名と接続順だけ短く残しておきます。オンタイムで始めるなら、その場の試行錯誤に頼らない方がいい。

エコーが起きたときの切り分けは、Web会議で自分の声が返る原因|相手側も確認で詳しく紹介しています。

会議ツールも、同じ部屋の音声を1台にする機能を用意している

会議室にいる全員が個人PCを使うこと自体は想定されています。資料共有やチャットは各自で行い、音声の入口と出口だけを重ねない。それぞれの公式案内でも確認できます。

「聞こえますか」で終わらせない

会議室側では、音が出た瞬間に接続トラブルが終わったように見えます。

オンライン側では、その後も、遠い声を聞き取り、誰が話しているかを推測し、会議室内で抜けた文脈を補い続けます。

音が聞こえていることと、同じように会議へ参加できていることは別です。

会議室から入る日は、まず音声を1台にする。遠い席の声を確認する。オンライン参加者にも分かるように話す。

それだけで、「音声ハウってます」から始まる会議は減らせます。