MEASUREMENT METHODOLOGY
10秒マイク診断の採点ロジックと検証方法
何を測り、いつ点数を出さず、どう比べるのか。診断結果を過信せず使うために、判定の中身を公開します。
公開日:2026年8月13日/最終更新:2026年9月12日
この診断は、短い音声を一つの塊として評価していません。話す前、話している間、読み終わった後を分けて取得し、それぞれ別の役割で使います。
目的は、マイクを専門機器のように格付けすることではありません。いつもの席と機器で測り、「マイクを近づける」「窓を閉める」「入力機器を変える」といった一つの変更が、相手への届き方を良くしたか比べるための簡易診断です。
約10秒を3つに分ける理由
- 話す前の無音:約2.2秒
空調や生活音を含む環境音の基準を取り、声と雑音の差を計算します。突発的な物音も別に数えます。
- 発声:原則約5.2秒以上
表示した一文を普段の声量で読み、声の大きさ、音割れ、周波数の分布、発声の安定性を取得します。文章が続いている間は途中で切らず、読み終わりを待ちます。
- 読み終わり後:約1.4秒
声が環境音の水準へ戻るまでの時間と、後ろに残った音を見ます。読み終わりを検出できなければ、反響を推測で採点しません。
4項目に使う実測値
| 表示項目 | 主に見る値 | 結果へ反映する考え方 |
|---|---|---|
| 声の大きさ | 発声中の音量(dBFS)、ピーク、音割れ率 | 小さすぎても大きすぎても下がります。単に入力音量を上げれば満点になる設計ではありません。 |
| 周囲の雑音 | 環境音、S/N比、無音時のばらつき、突発音、低域成分 | 「部屋が静かか」だけでなく、その環境音に対して声がどれだけ前に出ているかを重く見ます。 |
| 部屋の反響 | 読み終わり後の収束時間、前半・後半の残留音 | 声が環境音付近へ戻るまでが長いほど下がります。読み終わりを取れない場合は未測定にします。 |
| 声の輪郭 | 音声帯域の比率、周波数重心、こもり、音割れ、発声の安定性 | スペクトルだけで高得点にせず、声量が小さいときは輪郭の上限も抑えます。 |
dBFSはブラウザ内のデジタル音量です。騒音計のdB(音圧レベル)とは異なるため、別の端末どうしを絶対値だけで順位付けする用途には向きません。
総合点は、弱い項目を隠さない
4項目は加重幾何平均でまとめます。すべて70点なら総合点も70点です。平均した後に高得点側へ持ち上げる再変換は行いません。また、一項目が極端に低い、S/N比が不足する、音割れが多いといった重大な条件は、総合点とは別にも確認します。
たとえば声量だけが低いのに、ほかの項目の高さで「問題なし」に見えると、実際の聞きづらさと整合しません。総合点と最低項目の両方を見るのは、その食い違いを減らすためです。
測れなかったときは、低い点を出さない
発声が短い、環境音と声を分けられない、読み終わり後の静かな区間が取れない場合、音質が悪いとは限りません。そのため、必要な条件がそろわないときは総合点を空欄にして「再測定」と表示します。
- 無音・発声・読み終わり後のサンプル数が足りている
- 発声として検出できた時間が1.8秒以上ある
- 環境音と声の差を十分に取得できている
- 読み終わりを検出し、反響を測れている
- 測定品質が「高」に達している
この条件を通った後、総合85点以上かつ全項目70点以上を「良好」、総合70点以上かつ全項目55点以上を「問題なし」とします。それ以外でも重大な問題がなければ「改善可能な候補あり」とし、一つ直す候補を示します。
改善前後を比べるときの手順
点数は一度だけ見るより、条件をそろえて二度測ると役に立ちます。複数の条件を一度に変えると何が効いたか分からないため、次の順番をおすすめします。
- 01
普段の状態で測る本番と同じ端末、ブラウザ、席、マイク、話し方を使います。
- 02
録音を自分の耳でも聞く点数だけでなく、遠さ、こもり、カタカタ音、声の戻りを確認します。
- 03
一つだけ変えるマイクを近づける、入力機器を変える、窓を閉めるなど、変更は一つに絞ります。
- 04
同じ一文でもう一度測る総合点だけでなく、変えた項目と録音の差を比べます。
同じ採点処理に6つの入力を渡すと、どう変わるか
以下は、入力条件を固定して実際の採点処理を動かした合成データの計算例です。実際の録音、製品テスト、利用者の平均値ではありません。数値を一つずつ変え、何に反応して点数や判定が変わるかを確認できます。
| 入力条件 | 声量 | 雑音 | 反響 | 輪郭 | 総合・判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準となる入力声 −24 dBFS/環境音 −65 dBFS | 95 | 99 | 98 | 99 | 98良好 |
| 声だけを小さくする声を −40 dBFS に変更 | 42 | 87 | 99 | 57 | 64改善可能な候補あり |
| 環境音だけを大きくする環境音を −42 dBFS に変更 | 95 | 59 | 100 | 99 | 82問題なし |
| 音割れを加える上限付近のサンプルを 1.2% に変更 | 42 | 99 | 98 | 57 | 67要確認 |
| 読み終わり後も音が残る発声後の入力を −50 dBFS に維持 | 95 | 99 | 0 | 99 | 0要確認 |
| 読み終わりを検出できない読み終わり検出だけを未検出に変更 | 95 | 99 | 未測定 | 99 | 未採点再測定 |
環境音だけを変えた例では、反響点が少し上がることもあります。環境音が大きいと「音が背景の水準へ戻った」と早く判定されるためです。反響点だけを見て部屋が改善したとは判断できません。
読み終わり後の入力を残した例では反響点が0となり、幾何平均の総合点も0になります。これはその入力が採点条件の下限に達したという意味で、人の聞き取り能力やマイク全体の価値が0という意味ではありません。
再現に使った入力条件を見る
環境音は90フレーム・2,200ms、発声区間は207フレーム・6,700ms、末尾は55フレーム・1,400ms。発声区間の先頭175フレームを指定声量にし、続く4フレームを−35、−46、−55、−61 dBFS(環境音を下限)として、残り28フレームを環境音へ戻しています。
全フレームの音声帯域比0.86、低域比0.14、明瞭帯域比0.31、高域比0.07、周波数重心1,650Hz、平坦度0.22、クレスト10dB、ゼロ交差率0.09を固定しています。ピークは0.82、サンプル総数は1,000,000、音割れは通常0です。音割れ例だけ12,000サンプル・ピーク0.999としています。
音が残る例は発声後の入力を−50 dBFSに固定。読み終わり未検出の例は検出フラグだけを変えています。エコー除去・ノイズ抑制・自動ゲインはすべてOFFとして渡します。この単純化した入力で確認できるのは採点処理の反応であり、実際の音声認識や聴感との一致率ではありません。
100点や「測定品質・高」は、何を意味するか
点数は当サイトが定めた目安です。メーカー共通の認証基準や、会議の成功率ではありません。たとえば音割れがない入力の声量点は、−42 dBFSで34点、−30 dBFSで78点、−18 dBFSで100点、−7 dBFSで48点となるよう設定し、中間は直線で補間しています。上限付近の入力や音割れがあれば、ここから減点します。
「測定品質・高」は環境音・発声・読み終わりなど、計算に必要な条件を取得できたという表示です。判定の正確さが一定の割合で保証されるという意味ではありません。声の輪郭には声質やブラウザの補正も影響します。聞き取れた単語の割合を直接測っているわけではありません。
1〜2点の差を改善と決めつける前に、同じ設定で3回ほど測り、普段どのくらい数値が揺れるか確認してください。変更後も同じ条件で測り、元の揺れと重なる場合は録音を優先します。この方法も統計的な精度保証ではありません。
ブラウザ診断としての限界
本サービスが確認できるのは、ブラウザへ届いたマイク入力です。Zoom、Microsoft Teams、Google Meet等が通話時に行う圧縮や補正、通信状態、相手側のスピーカーまでは再現できません。診断で問題がなくても、会議アプリ側で別のマイクが選ばれていれば結果は変わります。
PCでは可能な範囲でエコー除去・ノイズ抑制・自動ゲインをOFFにして機器差を測りますが、実際に適用された状態も結果画面へ表示します。AndroidではBluetooth経路をOSが管理するため、互換性を優先して既定入力を使います。
「部屋の反響」は読み終わり後に入力音が残った程度の目安です。物理的な残響時間RT60の測定ではなく、反射した声、後から入った物音、音声処理の影響を区別できません。通話相手のスピーカー経由で自分の声が返るエコーや、複数端末のハウリングも、この一人での録音だけでは再現できません。
ブラウザの仕組みについては、MDNのマイク入力とアクセス許可、適用されたエコー除去設定、時間・周波数データの取得を参照しています。これらはAPIの説明であり、当サイトの点数や判定基準を認証するものではありません。
大事な商談では、この診断に加えて、実際に使う会議アプリの設定画面でもマイク名を確認してください。各サービスの手順は音声改善ガイドにまとめています。
検証と更新の方針
判定ロジックを変更するときは、同じ入力なら同じ点数になること、4項目が同点なら総合点も同点になること、声量が不足した状態で輪郭だけが不自然に高くならないこと、測定条件が不足したときに点数を確定しないことを自動テストで確認します。
ブラウザやOSの仕様差は完全には固定できません。結果と実際の聞こえ方に食い違いがあった場合は、使用端末、ブラウザ、入力機器、測定品質を確認し、再現できるものから調整します。変更後も、点数を品質保証として扱わず、同じ条件での改善比較に使う方針は変えません。